さて昨日の続きだ。なんで月光のスペクトルを取るのにミスったかだが。
その前に、月光のスペクトルと太陽光のスペクトルの関係ぐらい説明したら?
そうだな。太陽は光が強すぎるので、直接スペクトルを取ることはできない。光が強すぎて機械が焼けてしまうからな。従って何らかの方法で太陽光を減衰させなければならないんだが、金星の光から太陽光のスペクトルを間接的に測定するという手法があるらしい。
惑星の反射光って多少色は変わるけど、全領域の光をほぼ一様に減衰してくれるらしいわね。
で、さすがに金星は見た目が小さすぎるので、月に機械を向けたわけだ。これだけ目標がでかければ、さして苦労せずに採れるだろうと思ったんだが・・・てんでダメ。いったい何事だ?
あんた、月の写真って撮ったことある?
ンなモン、あるわきゃねーだろ。
ちょうど三脚とデジカメもあることだし、一度撮ってみたら? たぶんびっくりするから。
なんのことかさっぱりわからんが、まぁやってみるとしよう。さて・・・なんだとぉ!
最大望遠にしてもずいぶん小さく写るでしょ? それが現実よ。
一応、光学3倍ズームなんだが、なんでこんなに小さいんだ? いや、肉眼で大きく見えるのは錯覚のせいなんだろうけど。
比較対象物は小さな星明かりだけだけだから大きな月はより大きく見えるし、何より明るい色ってのは広がって見えるもんなのよ。碁石の白石が黒石よりも少し小さいのと同じ理由ね。
ぬぅ、ツッコミどころのない説明だな。しかしここまで小さいとは。カンで光ファイバー向けても何ともならん・・・いや、これくらいだったら時間かければどうにかなりそうな気が。
甘いってば。月の視半径ってどの程度か知ってる?
全天が360度だから、ビルのような遮蔽物がないと仮定すると、空全体は180度が見えることになるな。そこから大雑把に割り出して・・・げ、2〜3度くらいしかないのか?
ぜんっぜんハズレ。さっきの錯覚を考えに入れてないでしょ。理科年表によると、再接近時の平均視半径はたったの15分32秒58しかないそうよ。ちなみにこれ、太陽の平均視半径(15分59秒64)とほぼ一致するのね。だから皆既日食とか金環食なんてモンが起こるわけだけど。
たったの15分だとぉ! 1度の1/4しかねーじゃんよ。
そういうこと。ンなモンにカンで光ファイバー向けたって当たるわけがないじゃない。光ファイバーって真正面の光しかまともに伝えられないのよ。
ンなこと知っとるわい!
そう考えると、光ファイバーってのは視野角だけなら超高倍率望遠鏡と変わんないわね。大型の天体望遠鏡になると、照準合わせのために低倍率・広視野角のスコープがついてることぐらい知ってるでしょ?
うーむ、あのスコープはそんな役目があったのか。ならば・・・即興で簡易スコープを作ってみた。これさえあれば・・・ムリだわな。
だから、精度が肝心だってば。そんな信頼性のないものを使うくらいなら、肉眼でやった方がまだマシだって。
そういわれると悲しくなってくるぞ。しかし、人間の目ってのはアテにならんモンだな。
錯覚ってモンがあるからねぇ。そのおかげで余分な情報がカットされたり必要な情報が増幅されてるわけだけど、精度って点ではちょっとね。
くぅ、今回ばかりは見積もりが甘かったか。