月のスペクトルを取ってみたんだが、失敗した。
どこからそんな話が出たのよ?
ことの発端は・・・って、とんでもない量になりそうだな。ということで、今回は前後編に分けてお送りすることにしよう。
短期集中連載ってヤツね。ンじゃ白々しいけど、どこからそんな話が出たのよ?
先日、北天のスペクトルを取ったよな? ところがあとから検証してみたら、このとき採ったデータは実際の値から大きくはずれていることがわかった。で、紆余曲折の結果、月のスペクトルで代用することになったんだ。
ンじゃ、その「紆余曲折」の部分は後編に回すことにして、なんでまともじゃないデータになっちゃったの?
その前にスペクトルの取り方なんだが、ぶっちゃけた話、「分光光度計」という機械を対象に向けるだけでいい。ちなみに使ったのは、相馬光学という会社の「S-2600」という機種だ。
一般的にはお目にかかれるような機械じゃないわね。
当然だ。しかし教授の権力のおかげか、ウチの研究室にデモ用の機械が回ってきた。ところが使う用事がないので、段ボールに入れたままほったらかしになっていたんだ。それを(無断で)使わせてもらったというわけだな。
先日は分光光度計を北天に向けたんだっけ。なんで北天なの? 太陽のデータが欲しいなら直接向ければいいじゃん
さすがに、太陽に直接向けるとCCDが焼けるからな。それならば、北天方向から来る減衰した光を測定しようと思ったんだが、よく考えたら一様に減衰するわけではないことがわかった。
欲しいのは太陽光の生データだもんね。一様に減衰しないってことはグラフの形が変わるってことだから、確かに意味ないわね。んじゃ、なんで一様に減衰しないの?
突然だが、空が青く見えるのはなぜだ?
ホントに突然ね。確か、太陽光が空気中の水蒸気やチリで散乱されるからだったかしら?
半分正解。太陽光ってのは様々な波長、言い換えれば七色の光が混ざっているんだが、この中でも短波長側、つまり青や紫の方が長波長側である赤やオレンジよりも散乱されやすい。
逆に言えば、赤やオレンジの光は散乱されにくいってわけね。つまり、直進性が高いとも言えるかな?
そういうこと。つまり、太陽以外の方向からは青や紫の光しか見えないわけだ。これが空が青く見える理由だな。余談だけど、宇宙が暗いのは光を散乱させるチリや水蒸気がないからだ。
なるほど。ってことは、北天に測定機を向けても散乱されないオレンジとか赤は引っかからないんだ。
そ。実際にデータと理論値をつきあわせてみたが、どう考えても長波長領域の光が弱すぎた。これは、赤だのオレンジだのの光が散乱しにくいことの裏付けとも言える。
つまり、青だの紫だのがえらい強くて、赤やオレンジはほとんどでなかった、と。
その通り。ついでに言うと、赤よりもさらに長波長側にある赤外線もほとんど出なかった。まぁ、当然だわな。
なるほどねぇ。だからおかしなデータになったんだ。さて、そろそろ紙面がつきるわけだけど。
あんたの見積もりが激烈に甘かったからミスしたのよねぇ。
やかましいわ!