つかれた・・・。
何やった?
太陽光に関する資料を集めているんだが、インターネットでは話にならんので、各機関に直接問い合わせることにしたんだ。
太陽なんか、何百年も研究されてるんでしょ? いまさら公開されてない資料なんかあるの?
まぁ、Webを漁ってれば虹色の画像ぐらいはすぐ手に入るわな。
プリズム使って太陽光を分光するってヤツね。中学校の理科の教科書とかでも見た覚えがあるけど。
そのとおり。ところが私が欲しいのはさらに突っ込んだもので、それぞれの色の強さのデータだ。各波長における分光強度ってヤツだな。
その辺ってあんたの専門領域でしょ。自分で調べたら?
やったよ。小型分光光度計を借りることができたので、日中の北天方向からの光を調べてみた。
思った通りに結果にならなかったのね。
そういうこと。一般に公開されている図を見ると、かなり滑らかな曲線になるはずなんだ。しかし私がとったデータをグラフ化してみたところ、ガタガタの線になってしまった。これは大気の散乱が原因じゃないかと思っているが。
さっき北天方向に向けてって言ったわよね。そりゃ太陽の方向を向いてないんだから、散乱の影響がでて当然でしょ。
光学機器を太陽に直接向けるのは御法度だ。そうでなくても分光光度計ってのはデリケートな機械なんだ。ンなことしたらCCDが焼けるぞ。
ぬぅ、そこまで考えないといけないのか・・・。
で、そういうデータを持っていそうな機関に直接問い合わせることになったわけだ。
なるほどね。で、結果は?
まず、名古屋科学館に問い合わせた。
地元の科学館だし、当然の選択ね。あそこ、太陽光をプリズムで分光させた展示があったはずだし。
結果は、資料がないそうだ。名古屋科学館ではそういった観測をしていないので、公開できるデータがないんだと。まぁ、半分予想していた答えだが。
まぁ、地方の科学館じゃ仕方がないか。で、次は?
名古屋科学館から紹介してもらった国立天文台。
理科年表作ってるとこね。ここなら何かありそうだけど。
国立天文台で公開できそうなデータはすべて理科年表に収めてるってさ。で、該当しそうな箇所を教えてもらったけど、役に立ちそうなデータはなかった。
そういやあんた、理科年表なんか持ってたわね。しっかし、ここでもダメかぁ。確か、太陽観測用の人工衛星も運営してたはずだから期待したんだけどなぁ。「ようこう」とかって言ったっけ。
「ようこう」はX線による太陽フレアの観測が主任務だ。可視光域の観測はしとらんのだと。さて次だが、国立天文台が紹介してくれた気象庁に問い合わせてみた。
おおっ、これは盲点。確かに大気圏内のことなら気象庁の方がよく知ってるかもね。紫外線とかの警報も出してるし。で、結果は?
確かに紫外線については専門だ。しかし観測しとるのは紫外線だけだから、近紫外線以上の領域は全くデータなしなんだと。具体的には290から325nmは1時間に1回測定しているが、それ以外はないんだと。私が欲しいのは350nm付近から可視光、赤外線の領域だから、レンジ外というわけだ。
役に立たないわねぇ。
私が欲しがっとるデータがイレギュラーなのかもしれんが。さて、気象庁から紹介されたのは気象庁気象研究所だ。
気象庁直属の研究所かな? ここだったらあるいは何かあるかも・・・。
ンな研究はやってません、だそうな。
やっぱダメか。
ついでに言うと、そういうことをしている研究所、機関の心当たりもないんだと。それでもいろいろと調べてくれて、物理関係の教科書を当たれば数値ではないにしてもグラフぐらいはあるようだとの回答をいただいた。
当然、あんたもその程度の文献調査はやってあるわよね。
あっはっは。実はまだやってなかったりする。
そーゆーことは最初にやれよ。
天文関係の書籍はすでにいくつか当たったんだが、物理ってのは意表をつかれた。まぁ、ちょっと考えればでてくる答えなんだろうけど。
んじゃ次は文献調査か。ほぅれ、図書館行って来い。
もう行って来た。で、よさげな資料が見つかった。それによると、どうやら私が小型分光光度計使ってとったデータは、それほど的はずれでもなかったようだ。
ふっ。幸せの青い鳥はすぐそばにいたってわけね。
なんか、一気に力が抜けたって感じだな。さて最後になりましたが、担当してくださった各研究機関のみなさまへ。お忙しいところ丁寧に対応していただき、ありがとうございました。