一週間ぶりのご無沙汰ですが、皆様いかがお過ごしだったでしょうか。時折寒くなることがあるとはいえ、最近はずいぶん温かくなってきました。そろそろ春が近いかもしれませんね。
まだ2月だぞ。ちーと気が早くないか?
2月っても、もう月末だけど。すぐに3月だし、そろそろ春の話したっていいんじゃないかな。と言いつつ今回のネタは前回の予告通り、M-V8号機と「ASTRO-F」なんだけど。いや〜、今回もきれいに打ち上がりましたね。
なんか、M-Vロケットって安心して見ていられるな。
うん、あたしもそう思ったんだけど、実は今回でM-Vロケットとしては3連続目なのよ。2003年5月の5号機、2005年7月の6号機、で、今回の8号機ってワケね。その前の4号機は1段目のノズル破損のため打ち上げ失敗。
7号機が抜けてるように見えるが?
M-Vロケットって打ち上げる衛星ごとに調整してあるもんだから、基本的に流用が効かないのよ。で、衛星の完成が遅れたりすると、打ち上げるロケットもそれに合わせて順に繰り下がってくワケね。
それで順序が逆転したりするのか。
ちなみに7号機は太陽観測衛星「SOLAR-B」を積んで2006年度打ち上げ予定ね。さて本題その一のM-V8号機です。こちらは21日に打ち上げ予定でしたが天候の関係で順延され、22日に再挑戦、無事打ち上がりました。
今回の順延はなにやら伝説になりそうなエピソードがあったみたいだな。
そう、それ。21日朝、ロケットがランチャーにセットされ、あとは打ち上げを待つばかりという状況だったんだけど、そのタイミングでレーダーに雨雲が引っかかったのね。10分後に激しい雨のおそれアリ。
ロケットって雨ぐらいで打ち上げられなくなるモノなのか?
M-Vロケットのフェアリングって大音響から衛星を守る防音材としてコルク使ってるのよ。ところがこのコルク、濡れると防音性能が劣化するのよね。あと、地上とロケットを結ぶコンセントが防水仕様になってないとか。
他にも高速でぶつかる水滴対策とか、いろいろ問題がありそうだな。
ということで打ち上げ延期が決まり整備塔にロケットが戻されたんだけど、それから1分と経たずに大粒の雨が降り出したんだって。まさに間一髪。もしロケットがびしょ濡れになったら何日延期になったことか。
うーむ、的確な判断だったんだな。
明けて22日、あいにくの曇り空の中、M-V8号機は定刻通り打ち上げられました。衛星も無事軌道に投入され、赤外線天文衛星「あかり」が誕生しました。その後、太陽電池パドルも開き、動作もばっちりのようです。
「あかり」は何やるんだ?
最大の目標は赤外線による全天サーベイね。これは天球上のすべての領域を観測するというもので、宇宙の地図を作るのが目的。銀河の進化や星の一生の解明やなんかが期待される成果に上がっているわね。
でもなんで赤外線なんだ? ハッブルみたいに可視光線で観測したっていいだろう。
ありていに言えば有利だから。遠くの星の光はドップラー効果で赤外線として観測されるし、生まれたての銀河は大量の赤外線を放出してるし、可視光線を出さない白色矮星でも赤外線は出てるし。
そりゃ、絶対零度でもない限り赤外線は出るわな。
その代わり、自分自身の熱がノイズとして乗ってしまうわね。そこで「あかり」は、赤外線望遠鏡をはじめとして観測装置全体を機械式冷凍機と液体ヘリウムの二段構えで冷却するようになってるわけ。
そりゃよく冷えそうだな……
でも液体ヘリウムが蒸発しきったらそれでおしまい。寿命は550日ってとこかな。さて赤外線による全天サーベイは実に20年ぶりになりますが、ここから得られる大量のデータにはどんな新発見があるのか、今から楽しみですね。